林 不忘
釘抜藤吉捕物覚書
一
紫に明ける大江戸の夏。
七月十四日のことだった。神田明神は祇園三社、その牛頭天王祭のお神輿が、今日は南伝馬町の旅所から還御になろうという日の朝まだき、秋元但馬守の下屋敷で徹宵酒肴の馳走に預かった合点長屋の釘抜藤吉は、乾児の勘弁勘次を供につれて本多肥後殿の武者塀に沿い、これから八丁堀まではほんの一股ぎと今しも箱崎橋の袂へさしかかったところ。
「のう、勘、かれこれ半かの。」
林 不忘
一
紫に明ける大江戸の夏。
七月十四日のことだった。神田明神は祇園三社、その牛頭天王祭のお神輿が、今日は南伝馬町の旅所から還御になろうという日の朝まだき、秋元但馬守の下屋敷で徹宵酒肴の馳走に預かった合点長屋の釘抜藤吉は、乾児の勘弁勘次を供につれて本多肥後殿の武者塀に沿い、これから八丁堀まではほんの一股ぎと今しも箱崎橋の袂へさしかかったところ。
「のう、勘、かれこれ半かの。」