小酒井 不木

白痴の知恵

魚釣り

塚原俊夫君が、魚釣りを好むことは、これまでまだ一度も皆さんに紹介しませんでしたが、俊夫君は、かつて動物学を修めたとき、ことに魚類の解剖と生理とに興味を持ちまして、それと同時に魚釣りも大好きになったのであります。

近頃では、むずかしい事件を依頼されると、わざわざ魚釣りに出かけて考えをまとめることもありましたが、多くの場合は、半日か一日を面白く遊んで頭脳を休めるために、魚釣りに出かけるのでした。

魚釣りの場所は、言うまでもなく東京の郊外ですが、これという決まった所へは行きませんでした。時としては二里も三里も離れたところへ行くことがありまして、いつの場合にも私がそのお供を仰せつかったことは申すまでもありません。私も小さい時分から魚釣りが好きですから、いつも喜んでお供をしました。

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