小酒井 不木
玉振時計の秘密
一
これまで塚原俊夫君の取り扱った事件の中には、ずいぶん複雑なものもありましたし、また、きわめて簡単なものもありました。しかし、簡単といっても、俊夫君にとってその解決が容易であったというだけでして、事件そのものはかなりにむずかしいものが多かったのであります。
これから皆さんにお話ししようとする事件も、警視庁の人たちがもてあましたあげく、俊夫君によって、たちどころに解決された殺人事件であります。犯人はたしかにあの男であると推定されておりながら、その男がじゅうぶん計画をしてやったことでありますから、警視庁の人たちはその証拠をあげることができなかったのです。
けれども、どんなに巧妙に計画された犯罪でも、どこかに必ず手ぬかりがあるものです。この事件においても、やはり犯人は大きな手ぬかりをしていたのです。しかし、その手ぬかりを、警視庁の刑事たちは気がつかなかったのでして、ただ俊夫君だけが、それを容易に発見して、ついに犯人を自白せしめることができたのであります。