平林 初之輔
ポウの本質
ポーは、アメリカの詩人にして最もアメリカ人らしくない詩人だと考えられている。だが、その逆に、アメリカならばこそポーを生み得たのだと言うこともできる。
ボードレールはポーについて言っている。「彼はアメリカの雰囲気にむせて、『ユウレカ』の冒頭で次のように書いた――私はこの書物を、夢を唯一の実在として信ずる人たちにささげる――だから彼は一つのすばらしい反抗だったのだ。彼は反抗だった。そして、彼は彼自身のやりかたで反抗した」
文明と、物質的進歩と、デモクラシーと、アメリカを構成するこの三位一体をポーはひっくりかえした。ポーはアメリカ文学におけるオアシスであった。
とはいえ私は、現代のアメリカが、その機械的文明の中から、新しい詩を生む可能性をもっていること、現にそれを生みつつあることを否認するものではない。しかし、ポーの時代には、話は別である。彼は、彼自身のやりかたで、当時の俗悪そのものであった非伝統的な、植民地的なアメリカ文明に反抗せざるを得なかったのだ。