平林 初之輔
文芸は進化するか、その他
一 文芸は進化するか?
阿部知二氏は『読売新聞』文芸欄(昭和五年五月六日)で、小林秀雄氏を評して次のように言う。
「このことは、彼が流行というものをあまり無視していることになりはしないか。……われわれは、文学においては、一歩積極的に――進化という観念を持ち得るところまで到達していない。それゆえに、流行で我慢しなければならない。さて、この流行なる観念なくして、いわゆる今日の新文学――それはプロレタリアのでも新芸術派のでもいい――を正当に解釈することができるだろうか」
そして氏は、過去のすぐれた文学作品があるのに、現代の私たちが、文学作品を制作する権利は「この流行――社会とその文明の推移によって生ずるところの観点の差異に着目し、この角度から制作することによってのみ」得られるのであると主張する。