平林 初之輔
動物園の一夜
一
樹立の青葉は、病後の人のように喘いでいる。
戦場に遺棄された戦死者のように四肢をだらりと投げ出してライオンが正体なく眠っている。虎も豹もごろりと横になって寝ている。孔雀は妍を競う宮女のように羽根をひろげて風の重みを受けておどおどしている。象は退屈そうに大きな鼻をぶらぶら振っている。大小無数の水禽のさざめき、蛇のように、長い頸をくねらして小さな餌をさがしてはついばんでいる駝鳥、檻の外には人間どもが、樹陰のベンチの上に長々と寝そべったり、のろまな足どりで檻から檻へと足を曳きずったりしている。
植物と動物と人間とが、差別を撤廃して、原始の生活に帰ったような上野の動物園の真夏の昼過ぎである。