平林 初之輔
探偵小説の世界的流行
名前は忘れたが、どこかの国の総理大臣で、毎日一時間ずつ探偵小説を読むことを習慣にしていた人があるそうだ。アメリカの前大統頷ローズベルトは、探偵小説の愛読者であることを公然と告白したことがある。
日本でも貴族院議員に『新青年』の愛読者があったり、思いもよらない学者、政治家や、教育家の間にすらも探偵小説の愛読者は無数にある。
一般に探偵小説の愛読者は、他の軟文学の読者よりも遥かに広い範囲にわたっており、しかもその中にはより多くの教養ある階級の人々を包含している。男女の学生の愛読書のリストの中にも、最近著しく探偵小説が増加してきたことは事実である。
欧米の読書界ではこの傾向は世界大戦後急に顕著になってきたということであり、アメリカのある文学入門書にも、探偵小説は凡庸な作者には書けないが、今後、最も見込みのある小説は探偵小説であろうと書かれている。