北原 白秋
孟宗と七面鳥
閑雅な孟宗の枯れ色は私にとつて何より親しく感じられる。私は階上の書斎から硝子戸越しに朝夕その眺めを楽しんでゐる。どの窓を眺めても孟宗がしだれてゐる。寒くて風の少ない日などはその揺れる秀さきばかりがこまかな光りを反してゐる。
聖ヶ獄にも斑ら雪が残つてゐる。庭の寒枇杷も冷えきつてよい。時とすると、思ひもかけず、ちらちらと牡丹雪がふつてくる。さうしたしつとりとした曇り日もうれしい。
私の家は半潰れのままだが二階だけはどうにか住めるのである。ほとんど廃墟とも云つてよいこの家の生活も住み馴れて見るといよいよに執着が増す。やはりここに落ちついて、しづかな詩作生活に耽らう。
先達つての再度の大震では、もう潰れることと思つたし、命もないものと観念してゐたが、どうやら無事に済んだ。よくも此の壊れ家が倒れないものである。