宮沢 賢治

大礼服の例外的効果

こつこつと扉を叩いたのでさっきから大礼服を着て二階の式場で学生たちの入ったり整列したりする音を聞きながらストウヴの近くできうくつに待ってゐた校長は 低く よし と答へた。

旗手が新らしい白い手袋をはめてそのあとから剣をつけた鉄砲を持って三人の級長がはいって来た。校長は雪から来る強い反射を透して鋭くまっさきの旗手の顔を見た。それは数週前いきなり掲示場にはりつけられた〔〕われらはわれらの信ぜざることをなさず といった風の宣言めいたものの〔〕十幾人かの聯名のその最后に記された富沢であった。

それについてのごたごたや調査で校長はひどく頭を悩ました。

ところがいま富沢は大へんまじめな様子である。それは校旗を剣つきの鉄砲で護るわけがちゃんとわかったやうでもありまた宣言通り式場へ行ってからいきなり校旗を抛げ出して何か叫び出すつもりのやうでもありどうも見当がつかなかった。

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