乙骨 三郎
総説 西洋音楽史の時代
西洋音楽発達の経路を明らかにするにはそれを幾つかの時代に区分しなければならないが、それには主として音楽そのものの進歩の順序を考え、併せて一般史や他の芸術史(殊に文学史)との関係も参酌するのがよい。我々はそれらの点を考慮した上で音楽史を次の諸時代にわける。
(一)古代――キリスト教発生以前の諸国の音楽の栄えた時代で、音楽の様式からいえば単音の連続よりなる旋律のみが行われた時である。この単音時代になされた重要な事は種々の音階や旋律の作られたことである。
(二)中世――キリスト教の単音聖歌の起った時からローマ教会の重音聖歌の完成された時(即ちパレストリーナが世を去った頃)までを含む。この時代は更に次の二期にわけられる。
(イ)単音期――一世紀から九世紀を含む。古代の音楽(ユダヤ及びギリシャのもの)に基いて新しい聖歌の旋律が作り出された時期である。