種田 山頭火

砕けた瓦

私は此頃自から省みて『私は砕けた瓦だ』としみじみ感ぜざるをえないようになった。私は瓦であった、脆い瓦であった、自分から転げ落ちて砕けてしまう瓦であったのだ。

玉砕ということがあるが、私は瓦砕だ。それも他から砕かれたのではなくて、自から砕いてしまったのだ。見よ、砕けて散った破片が白日に曝されてべそを掻いている。

既に砕けた瓦はこなごなに砕かれなければならない。木端微塵砕き尽されなければならない。砕けた瓦が更に堅い瓦となるためには、一切の色彩を剥がれ、有らゆる外殻を破って、以前の粘土に帰らなければならない。そして他の新らしい粘土が加えられなければならない。

家庭は牢獄だ、とは思わないが、家庭は沙漠である、と思わざるをえない。

青空文庫の作品カード