種田 山頭火

道〔扉の言葉〕

いつぞや、日向地方を行乞した時の出来事である。秋晴の午後、或る町はずれの酒屋で生一本の御馳走になった。下地は好きなり空腹でもあったので、ほろほろ気分になって宿のある方へ歩いていると、ぴこりと前に立ってお辞儀をした男があった、中年の、痩せて蒼白い、見るから神経質らしい顔の持主だった。

『あなたは禅宗の坊さんですか。……私の道はどこにありましょうか』

『道は前にあります、まっすぐにお行きなさい』

私は或は路上問答を試みられたのかも知れないが、とにかく彼は私の即答に満足したらしく、彼の前にある道をまっすぐに行った。

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