種田 山頭火

物を大切にする心

物を大切にする心はいのちをはぐくみそだてる温床である。それはおのずから、神と偕にある世界、仏に融け入る境地へみちびく。

先年、四国霊場を行乞巡拝したとき、私はゆくりなくHという老遍路さんと道づれになった。彼はいわゆる苦労人で、職業遍路(信心遍路に対して斯く呼ばれる)としては身心共に卑しくなかった。いかなる動機でそういう境涯に落ちたかは彼自身も語らなかったし私からも訊ねなかった。彼は数回目の巡拝で、四国の地理にも事情にも詳しかった。もらいの多少、行程の緩急、宿の善悪、いろいろの点で私は教えられた。二人は毎日あとになりさきになって歩いた。毎夜おなじ宿に泊って膳を共にし床を並べて親しんだ。阿波――土佐――伊予路を辿りつつあった或る日、私たちは路傍の石に腰かけて休んだ。彼も私も煙草入を取り出して世間話に連日の疲労も忘れていたが、ふと気づくと、彼はやたらにマッチを摺っている。一服一本二本或は五本六本である!

――ずいぶんマッチを使いますね。

――ええ、マッチばかり貰って、たまってしようがない。売ったっていくらにもならないし、こうして減らすんです。

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