泉 鏡花
瓜の涙
一
年紀は少いのに、よっぽど好きだと見えて、さもおいしそうに煙草を喫みつつ、……しかし烈しい暑さに弱って、身も疲れた様子で、炎天の並木の下に憩んでいる学生がある。
まだ二十歳そこらであろう、久留米絣の、紺の濃く綺麗な処は初々しい。けれども、着がえのなさか、幾度も水を潜ったらしく、肘、背筋、折りかがみのあたりは、さらぬだに、あまり健康そうにはないのが、薄痩せて見えるまで、その処々色が褪せて禿げている。――茶の唐縮緬の帯、それよりも煙草に相応わないのは、東京のなにがし工業学校の金色の徽章のついた制帽で、巻莨ならまだしも、喫んでいるのが刻煙草である。
場所は、言った通り、城下から海岸の港へ通る二里余りの並木の途中、ちょうど真中処に、昔から伝説を持った大な一面の石がある――義経記に、……