泉 鏡花
卵塔場の天女
一
時雨に真青なのは蒼鬣魚の鰭である。形は小さいが、三十枚ばかりずつ幾山にも並べた、あの暗灰色の菱形の魚を、三角形に積んで、下積になったのは、軒下の石に藍を流して、上の方は、浜の砂をざらざらとそのままだから、海の底のピラミッドを影で覗く鮮さがある。この深秘らしい謎の魚を、事ともしない、魚屋は偉い。
「そら、持ってけ、持ってけ。賭博場のまじないだ。みを食えば暖か暖かだ。」
と雨垂に笠も被らないで、一山ずつ十銭の附木札にして、喚いている。
泉 鏡花
一
時雨に真青なのは蒼鬣魚の鰭である。形は小さいが、三十枚ばかりずつ幾山にも並べた、あの暗灰色の菱形の魚を、三角形に積んで、下積になったのは、軒下の石に藍を流して、上の方は、浜の砂をざらざらとそのままだから、海の底のピラミッドを影で覗く鮮さがある。この深秘らしい謎の魚を、事ともしない、魚屋は偉い。
「そら、持ってけ、持ってけ。賭博場のまじないだ。みを食えば暖か暖かだ。」
と雨垂に笠も被らないで、一山ずつ十銭の附木札にして、喚いている。