堀 辰雄
雉子日記
雉子日記
一
去年の暮にすこし本なんぞを買込みに二三日上京したが、すぐ元日にこちらに引っ返して来た。汽車がひどく混んで、私はスキイの連中や、犬なんぞと一しょに貨物車に乗せられてきたが、嫌いなスティムの通っていないだけでも、少し寒くはあったが、この方がよっぽど気持が好いと思った。
すっかり雪に埋もれた軽井沢に着いた時分には、もう日もとっぷりと暮れて、山寄りの町の方には灯かげも乏しく、いかにも寥しい。そんななかに、ずっと東側の山ぶところに、一軒だけ、あかりのきらきらしている建物が見える。あいつだな、と思わず私は独り合点をして、それをなつかしそうに眺めやった。