原 民喜

雀

酔ぱらって雀を憶ひ出した二人は新宿まで出掛けた。屋台店の皿に赤裸のままの奴がころがってゐて、若い娘が庖丁で骨を叩いてゐた。一人は一羽の頭を噛ったばかりでもう食はなかった。一人は一串と、頭の欠けたもう一串を平げた。

頭を食ったばかりの男は、その後食ひ足らなかったことを残念がって改めて食ひに行った。「あの時は酔ぱらってゐて、赤身のままの奴を見たので、つい変な気持がしたのだ。」と、その男は云ってゐた。

食べものの話が出た時、一人が鼠はおいしいと頻りに云ふので、鼠が食へるかねと相手が問ひ返すと、いや雀の間違ひだと笑った。

ある女が信仰の話から輪廻思想まで説き出すと、二人の男は遽かにはしゃぎ出した。

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