大町 桂月
常磐の山水
一 利根川
千住の名物、鮒の雀燒をさかなに、車中に微醉を買ふ。帝釋まうでは金町より人車鐵道に、成田まうでは我孫子より汽車に乘り換へしが、我が行く先きは奧州仙臺、小利根を過ぎ、また大利根を過ぐ。このあたりは、さまでの大小なし。風致もほゞ相似たり。されど余はむしろ小利根河畔の[#「小利根河畔の」は底本では「小根利河畔の」]松戸よりも、大利根河畔の取手を取る。水に枕むの紅樓、醉を買ふに足るべし。古城址の丘、遙に富士を望む。極目蕭散にして快濶也。
二 筑波山
東京を出でてより石岡あたりまでは、幾んど絶えず左に筑波山を見る。土浦より凡そ五里、山麓まで車を通ず。山腹、筑波祠前に筑波町の市街あり。なにがし宿屋の二嬌、何人か銅雀臺にとざしたりけむ。左右二峯、女峯に奇岩多し。いつもながら辨慶の、引合ひに出さるゝこそ氣の毒なれ。戀ぞつもりて淵となりぬるみなの川は、男峯より出づ。