小野 佐世男
幽霊
1
残暑がすぎ、凉風がさわやかに落葉をさそう頃になると、きまって思い出すことがある。
私はまだ紅顔の美少年(?)だった。その頃、私達一家は小石川の家から、赤坂の新居へ移った。
庭がとても広かった。麻布の一聯隊の高い丘が、苔むした庭の後にそびえ、雑草やくるみの木が、垂れさがるように見える空の上に生い茂っていた。また、丘の下のせいかじめじめとしていて、いちじくの葉が暗い蔭をところどころに手をひろげ、庭の奥の方は陽も射さぬほどだった。
小野 佐世男
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残暑がすぎ、凉風がさわやかに落葉をさそう頃になると、きまって思い出すことがある。
私はまだ紅顔の美少年(?)だった。その頃、私達一家は小石川の家から、赤坂の新居へ移った。
庭がとても広かった。麻布の一聯隊の高い丘が、苔むした庭の後にそびえ、雑草やくるみの木が、垂れさがるように見える空の上に生い茂っていた。また、丘の下のせいかじめじめとしていて、いちじくの葉が暗い蔭をところどころに手をひろげ、庭の奥の方は陽も射さぬほどだった。