菊池 寛

吉良上野の立場

一

内匠頭は、玄関を上ると、すぐ、

「彦右衛と又右衛に、すぐ来いといえ」といって、小書院へはいってしまった。

(そらっ! また、いつもの癇癪だ)と、家来たちは目を見合わせて、二人の江戸家老、安井彦右衛門と藤井又右衛門の部屋へ走って行った。

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