田山 花袋・田山 録弥

踏査

街道がある。其處に日が照る。人が通つて居る。向うには山の翠が見える。それは年々歳々同じである。秋が來れば稻が熟つて、里川に澄んだ水に雜魚の泳ぐのが鮮かに見える。稻を滿載した車がガラガラと音を立てゝ通つて行く。私は其處に一『田舍教師』の歩いて行く姿を明かに見得た。

踏査――私はこの踏査といふことを地理學から學んだ。

日記よりも手紙、手紙よりも踏査の肝要なのを私は感じた。

歴史地理といふ學問は面白い學問である。私は小説地理といふことを『田舍教師』に由つて考へた。

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