田山 花袋・田山 録弥
或新年の小説評
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おくればせに新年と二月の小説を飛び/\に読んで見た。
正宗君の『催眠薬を飲むまで』は、またいつもの同じ題材だと思ひ/\読んで行つたが、最後の二頁に行つて、がらりと引くりかへされた。流石だと思つた。かういふ風に少年の自殺を見た形も面白いと思つた。たゞし、最後の二三の句に、少し色の濃すぎた、主観の言葉の入りすぎたところがあつて、やゝ自然らしい感じを傷つけたやうな気がした。『田舎者』は、旨くは書いてあるが、警句も沢山にあるが、一方の相手がイヤに超然としてゐるために――詳しく言へば、平行を保つてゐないために、単なる写生以上に芸術品らしいところが出て来なかつた。『姉の夢』は本がないので読まなかつた。
中村君の『人間の夜』にも矢張『田舎者』に見たやうな写生に堕したところがあつた。よくは書いてある。細い点にまで入つて行つて、観察、描写の上には非常な進境があるやうに思つたが、何うもかうした写生ばかりでは芸術として甚だ物足らない、もつと何かゞなければならないのではないかと思つた。