宮沢 賢治

うろこ雲

そらいちめんに青白いうろこ雲が浮かび月はその一切れに入って鈍い虹を掲げる。

町の曲り角の屋敷にある木は脊高の梨の木で高くその柔らかな葉を動かしてゐるのだ。

雲のきれ間にせはしく青くまたたくやつはそれも何だかわからない。

今夜はほんたうにどうしたかな。八時頃からどこでもみんな戸を閉めて通りを一人も歩かない。

青空文庫の作品カード