田山 花袋・田山 録弥

女と情と愛と

創造的気分

男女の争闘のその一歩先にある創造的気分に達しなければ、女は男を理解したといふことは出来ないし、男も亦女を理解したといふことは出来ない。女に子供を生ませて、それで男の勝利だと思つてゐるとそれが却つて敗北の種子となつたりすることがある。これに限らず、何でもさういふ風に単に勝敗できめて了ふことは出来ないものであるが、男女の間柄は、中でも殊にさうであるやうな気がする。

喧嘩

年を取るまで、夫婦喧嘩をしながら、それでも矢張一緒に棲んでゐる人達を他から見ると、非常に馬鹿々々しいやうな気がするが、当人同士には、長い間に築き上げられた気分のやうなものがあつて、別に馬鹿々々しいとも不思議とも思つてゐないらしい。この気分――この細かい心理的な気分の油で、この世の中は滑かに廻つてゐるとしか私には思はれない。

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