宮沢 賢治

図書館幻想

おれはやっとのことで十階の床をふんで汗を拭った。

そこの天井は途方もなく高かった。全體その天井や壁が灰色の陰影だけで出來てゐるのか、つめたい漆喰で固めあげられてゐるのかわからなかった。

(さうだ。この巨きな室にダルゲが居るんだ。今度こそ會へるんだ。)とおれは考へて一寸胸のどこかが熱くなったか熔けたかのやうな氣がした。

高さ二丈ばかりの大きな扉が半分開いてゐた。おれはするりとはいって行った。

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