田山 花袋・田山 録弥

迅雷

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およそ雷で一番恐ろしいのは、山の上で逢つたことだ。私は日光の山奥でさういふ経験を甞めたことがあつた。雨は車軸を覆すばかりに降る。風は凄じく下から巻きあげる。それに、電光が交叉して、そこでも此処でも雷が轟く。何とも言はれない恐ろしさだつた。

日本アルプスの登山者なども、何うかすると、さういふ目に逢ふといふことであつた。さういふ時に注意しなければならないことは、身の周囲に金属をつけておいてはならないことで、蝙蝠傘や、眼鏡や、懐中に持つてゐる金に感電して、命を失つたものも決して尠くないといふことであつた。

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