田山 花袋・田山 録弥
波の音
一
『何うもあれは変だね?』かう大学生の小畠はそこに入つて来た旅舎の中年の女中に言つた。それは広い海に面した室で、長い縁側と、スロオプになつてゐる広場とを隔てゝ、向うに波の白く凄じく岩に当つて砕けてゐるのを目にするやうなところであつた。
『え?』
頷で客の指す方に眼を遣りながら女中は訊いた。
田山 花袋・田山 録弥
一
『何うもあれは変だね?』かう大学生の小畠はそこに入つて来た旅舎の中年の女中に言つた。それは広い海に面した室で、長い縁側と、スロオプになつてゐる広場とを隔てゝ、向うに波の白く凄じく岩に当つて砕けてゐるのを目にするやうなところであつた。
『え?』
頷で客の指す方に眼を遣りながら女中は訊いた。