薄田 泣菫
器用な言葉の洒落
前号に細川護立侯のことを書いたから、今日はその御先祖細川幽斎のことを少しく書いてみよう。護立侯もかなり物識りだが、幽斎はそれにもましていろんなことに通暁してゐた。武術はいふに及ばず、その頃古今伝授を受けたたつた一人の男は彼だつたといふので、歌の方の造詣もほゞ察しることができよう。茶も上手で、とりわけ料理がうまかつた。この方では相当うぬぼれを持つてゐた利休なども、幽斎の前には一寸頭があがらなかつたらしく、ある時などはわざわざ頼んで、鶴の料理のお手前を拝見に往つたことがあつた。
幽斎が頓才があつて、歌の咏み口などが洒落てゐて、おまけに早かつたことは、かなり名高い話である。ある時、わが子の三斎と連れ立つて烏丸家を訪ねたことがあつた。主人の烏丸殿は細川が二人顔を揃へてゐるのを見て、
「細川二つちよつと出にけり」
といつて、ちよつかいを出された。