森 鴎外・森 林太郎
長谷川辰之助
逢ひたくて逢はずにしまふ人は澤山ある。
それは私の方から人を尋ねるといふことが、殆ど絶待的に出來ないからである。何故出來ないか、私には職務があると辯解して見る。併し此辯解は通らない。誰だつて職務の無いものはあるまい。何かしらしてゐるだらう。
役所に出る前、役所を引いた後、休日などがあるから、人を尋ねれば尋ねられる筈である。ところが、朝なぞは朝飯を食つてゐるとお客に掴まる。夕方歸つて見ると、待ち受けてゐる人がある。土曜日の午後、日曜日、大祭日なぞには朝からお客に逢ふ。一人と話をしてゐるうちに、後の一人が見える。とう/\日が暮れてしまふ。
面會日といふものを極めてゐる人もある。極めるとなると、なんだか自分で自分を縛るやうな心持がして不愉快である。それも嫌だ。