蒲 松齢

阿繊

奚山は高密の人であった。旅に出てあきないをするのが家業で、時どき蒙陰県と沂水県の間を旅行した。ある日その途中で雨にさまたげられて、定宿へゆきつかないうちに、夜が更けてしまった。宿をかしてくれそうな物を売る家の門口をかたっぱしから叩いてみたが、返事をするものがなかった。しかたなしに廡下をうろうろしていると、一軒の家の扉を左右に開けて一人の老人が出て来た。

「お困りのようだな。お入り。」

「有難うございます。」

山は喜んで老人についてゆき、曳いている驢を繋いで室の中へ入った。室の中には几も腰掛けもなかった。老人はいった。

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