徳永 直

眼

「ね、あんた、今のうち、尾久の家(親類)へでも、行っちゃったがいいと思うんだけど……」

女房のお初が、利平の枕許でしきりと、口説きたてる。利平が、争議団に頭を割られてから、お初はモウスッカリ、怖気づいてしまっている。

「何を……馬鹿な……逃げ出すなんて、そんな……アッ、ツ、ツ」

眼をむいて、女房を怒鳴りつけようとしたが、繃帯している殴られた頭部の傷が、ピリピリとひきつる。

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