直木 三十五

新訂雲母阪

一

「本当にそうか。」

と、聞かれると、そうで無いとは云え無い。く、とは確に聞いたのだから、これは断言できる。然し次の、る、はそう云ったような、云わないような、何うも明かで無いが、自分が唯一の証人で大勢の中で、美しい寡婦の悄然としている前で

「くる、と確に聞いた。」

青空文庫の作品カード