蒲 松齢
小翠
王太常は越人であった。少年の時、昼、榻の上で寝ていると、空が不意に曇って暗くなり、人きな雷がにわかに鳴りだした。一疋の猫のようで猫よりはすこし大きな獣が入って来て、榻の下に隠れるように入って体を延べたり屈めたりして離れなかった。
暫くたって雷雨がやんだ。榻の下にいた獣はすぐ出ていったが、出ていく時に好く見るとどうしても猫でないから、そこでふと怖くなって、次の室にいる兄を呼んだ。兄はそれを聞いて喜んでいった。
「弟はきっと、ひどく貴い者になるだろう。これは狐が来て、雷霆の劫を避けていたのだ。」
後、果して少年で進士になり、県令から侍御になった。その王は元豊という子供を生んだが、ひどい馬鹿で、十六になっても男女の道を知らなかった。そこで郷党では王と縁組する者がなかった。王はそれを憂えていた。ちょうどその時、一人の女が少女を伴れて王の家へ来て、その少女を元豊の夫人にしてくれといった。王夫妻はその少女に注意した。少女はにっと笑った。その顔なり容なりが仙女のように美しかった。二人は喜んで名を訊いた。女は自分達の姓は虞、少女の名は小翠で、年は十六であるといった。そこで少女を買い受ける金のことを相談した。すると女がいった。