淡島 寒月
亡び行く江戸趣味
江戸趣味や向島沿革について話せとの御申込であるが、元来が不羈放肆な、しかも皆さんにお聞かせしようと日常研究し用意しているものでないから、どんな話に終始するか予めお約束は出来ない。
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人はよく私を江戸趣味の人間であるようにいっているが、決して単なる江戸趣味の小天地に跼蹐しているものではない。私は日常応接する森羅万象に親しみを感じ、これを愛玩しては、ただこの中にプレイしているのだと思っている。洋の東西、古今を問わず、卑しくも私の趣味性を唆るものあらば座右に備えて悠々自適し、興来って新古の壱巻をも繙けば、河鹿笛もならし、朝鮮太鼓も打つ、時にはウクレルを奏しては土人の尻振りダンスを想って原始なヂャバ土人の生活に楽しみ、時にはオクライナを吹いてはスペインの南国情緒に陶酔もする、またクララ・キンベル・ヤングやロンチャニーも好愛し、五月信子や筑波雪子の写真も座臥に用意して喜べる。こういう風に私は事々物々総てに親愛を見出すのである。
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