倉田 百三

青春の息の痕

序

これは私が大正三年秋二十二歳の時一高を退学してから、主として、二十七歳の時「出家とその弟子」を世に問うまで、青春の数年間、孤独の間に病を養いつつ、宗教的思索に沈みかつ燃えていた時代に、やはり一高時代のクラスメートで、大学卒業前後の向上期にありし久保正夫君および久保謙君に宛てて書き送った手紙を編み集めたものである。

両君とも一通も失わずに保存していて下さった。

もとよりこれらの手紙は公表することなど予期して書かれたものではない。この寂寥と試練の期間を私はひとえに両君の友情に――というよりも友情の文通に支えられて生きた。私は遠くはなれて住み、一、二度しか相会うことはできなかった。それに海岸から、病院へ、それから温泉へ、それから修道園へ、と私は病を養いつつさまよっていたから。

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