田中 貢太郎

轆轤首

一

肥後の菊池家に磯貝平太左衛門武行と云う武士があった。頗る豪勇無雙の士であったが、主家の滅亡後、何を感じたのか仏門に入って、怪量と名乗って諸国を遍歴した。

甲斐の国を遍歴している時、某日唯ある岩山の間で日が暮れた。そこで怪量は恰好な場所を見つけて、笈をおろして横になった。

横になる間もなく月が出た。その月の光が四辺に拡がったかと思うと、その光の中から湧いて出たように黒い影が現れた。木樵らしい男だった。その男は周章てたようにして怪量の傍へ往った。

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