カフカ フランツ
火夫
十六歳のカルル・ロスマンは、ある女中に誘惑され、その女とのあいだに子供ができたというので、貧しい両親によってアメリカへやられたのだが、彼がすでに速度を下げた船でニューヨーク港へ入っていったとき、ずっと前から見えていた自由の女神の像が、まるで突然強まった陽の光のなかにあるように見えた。剣をもった女神の腕がまるでつい今振り上げたばかりのようにそびえ、その姿のまわりにはただようような風が吹いていた。
「あんなに高いぞ!」と、彼は自分に言い、まるで船を去ることを考えないような様子で、彼のそばを通り過ぎていく荷物運搬人たちがいよいよ数を増していくのに押されて、だんだんと舷側の手すりまでいってしまった。
航海中に一時的に知合いになった一人の若い男が、通りすがりにいった。
「ほう、まだ降りる気がないのかい?」