蒲原 有明

松浦あがた

一

「黄櫨成レ列隴※[#「月+祭」、107-上-4]間 南望平々是海湾 未レ至二栄城一三五駅忽従リ二林※[#「縢」の「糸」に代えて「土」、U+584D、107-上-5]一得タリ二温山ヲ一。」

とはこれ頼山陽が「見温仙岳」の絶句――この詩を誦し去りて、われらは先づ肥前の国に入る。「温泉はちまき、多良頭巾」といふこと、これをその国のある地方にて聴く、専ら雲の状を示せるもの、おもしろき俚諺ならずや。温泉岳と、多良岳と、かれに焦熱の地獄あれば、これに慈悲の精舎あり、これに石楠花の薫り妙なれば、かれに瓔珞躑躅の色もゆるがごとし、一は清秀、他は雄偉、ともに肥前の名山たることはしばしば世に紹介せられたりし、かつ題目の制限を超ゆるあたはざれば、これより直に、北のかた、松浦あがたの空を望まむかな。

南、島原半島の筑紫富士(温泉岳)と遥にあひたいし、小城と東松浦との郡界の上に聳え、有明海沿岸の平野を圧するものを天山――また、あめやまともいふ――となす。この山ことに高しとにはあらざれども、最はやく雪を戴くをもて名あり。蓋しその絶巓は玄海洋をあほり来る大陸の寒風の衝くに当ればなり。

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