有島 武郎
お末の死
一
お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ/\した。
「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」
お末は朋輩にこんな物の云ひ方をした。十四の小娘の云ひ草としては、小ましやくれて居るけれども、仮面に似た平べつたい、而して少し中のしやくれた顔を見ると、側で聞いて居る人は思はずほゝゑませられてしまつた。
有島 武郎
一
お末はその頃誰から習ひ覚えたともなく、不景気と云ふ言葉を云ひ/\した。
「何しろ不景気だから、兄さんも困つてるんだよ。おまけに四月から九月までにお葬式を四つも出したんだもの」
お末は朋輩にこんな物の云ひ方をした。十四の小娘の云ひ草としては、小ましやくれて居るけれども、仮面に似た平べつたい、而して少し中のしやくれた顔を見ると、側で聞いて居る人は思はずほゝゑませられてしまつた。