泉 鏡花
化鳥
一
愉快いな、愉快いな、お天気が悪くって外へ出て遊べなくっても可いや、笠を着て、蓑を着て、雨の降るなかをびしょびしょ濡れながら、橋の上を渡って行くのは猪だ。
菅笠を目深に被って、※[#「さんずい+散」、138-4]に濡れまいと思って向風に俯向いてるから顔も見えない、着ている蓑の裙が引摺って長いから、脚も見えないで歩行いて行く、脊の高さは五尺ばかりあろうかな、猪、としては大なものよ、大方猪ン中の王様があんな三角形の冠を被て、市へ出て来て、そして、私の母様の橋の上を通るのであろう。
トこう思って見ていると愉快い、愉快い、愉快い。