北大路 魯山人

小生のあけくれ

山というほどの山ではないが、山中での朝夕起臥三十余年、ほとんど社交のない生活を営みながら、小生は時に快速船のように、何事をも進ませずにはいられないクセを持っている。

自慢ではないが、ソレッというと、すべてに超スピードで活動するために、周辺の助け舟は目のまわるようなテンテコ舞いをさせられるが、小生から見るとすべてが鈍速で見ていられない。第一快調を欠いている。その理由をとくと考えてみると、他でもない、小生のようにできるかぎりの睡眠をとっていない。また小生の日常のように栄養を摂っていない。そして碌でもない平凡な俗事に頭を煩わすことが多過ぎる。美しずくめばかりを狙っている小生の生活とは、どうやら別世界を歩んでいるようだ。

小生のように自由を好むものには、グループに加わることはとうていできるものではない。共同画業、共同芸業などまったく縁遠い。

日常の食物についても、多くの人は家畜同然、おあてがいの食物で栄養を摂っているように私には見える。妻女の作ったおあてがいの料理、料理人の作ったおあてがいの献立料理、これでことを足して、すましているのが大部分の人間である。

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