北大路 魯山人
世界の「料理王逝く」ということから
「世界の食通から『料理の王』と賛美されたフランス随一の板前オウグュスト・エスコフィエ老がこのほど亡くなった。
翁は外国にあって――わけても英・独・米等の地に永く留まって、フランス料理の醍醐味を遍からしめたので、『美食の大使』とも呼ばれていた。
ロンドンのサボイ・ホテルやカルトンで腕を揮っていた頃には、どれほどの喰いしん坊がはるばる海を渡って彼の皿を求めに来たか知れない。
大戦前、しばらくの間独帝に仕えた折りのこと、朕を毒殺するも容易であろうといったカイゼルに対して、フランス人は不意討ちなどは仕りませぬと敢然といい放ったものだという。