橘 外男

葛根湯

日本へ来て貿易商館を開いてからまだ間もない瑞典人で、キャリソン・グスタフという六尺有余の大男がある。図体に似合わぬ、途方もない神経質な奴であった。ある朝、用事があって訪ねて行ってみるとこの動脈硬化症は手紙を書いていたが、人の顔を見るといきなり手を振って、

「静かに! 静かに! 小さな静かな声で話してくれ! 頭に響いてどうにも堪えられんから」

と言うのであった。鼻風邪を引いたというのだったが、なあに引いたのは鼻の一部分だけで別段熱も何にもなく、のべつに涙を溜めて嚔をしているだけのことであったが、そこが大分人よりも違っている超神経質氏であったから言うことが頗る振るっていた。内科医のところへ行くとありもせぬ病気をみつけ出されるのが怖いというので、絶対に足を踏み込まぬ男であったが、それほど気分が悪いのならジンかコニャックでも引っ掛けて、蒲団を被って寝ちまったらどうだと言ったら、グスタフは頭に響かせながら、

「WHATNONSENSE!」

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