南部 修太郎

死の接吻

猫の唸聲

「ふウん、臺所に電氣がついてる‥‥」

凍りついた雪の道に思はず足を止めて、若い農夫のカアルソンは宵闇の中に黒く浮んでゐる二階建の別荘の方へおびえたやうな視線を投げた。

千九百三十二年三月四日、ちやうど金曜の晩のこと、ストツクホルムから程近いモルトナス島のゼッテルベルグ老人の別荘へ昨日から度々電話を掛けてみるのだが一向に返答がない、日頃からごく懇意にしてゐる老人のことなのでひどく氣に掛かつて、その日の仕事をやつと片附けると、カアルソンは自分の農場から一マイルほどの道を大急ぎで駈けつけて來たのだつた。

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