岩野 泡鳴
猫八
一
「おい、大将」と呼びかけられて、猫八は今まで熱心に読み耽ってた講談倶楽部から目をその方に転じた。その声ですぐその人だとは分ってたので、心易い気になって、
「いよう、先生!」わざと惚けた顔つきをしてみせながら、「よくこの電車でお目にかかるじゃアございませんか――さては、何かいい巣でもこッちの方にできました、な?」
「なアに、巣鴨の巣、さ!」
岩野 泡鳴
一
「おい、大将」と呼びかけられて、猫八は今まで熱心に読み耽ってた講談倶楽部から目をその方に転じた。その声ですぐその人だとは分ってたので、心易い気になって、
「いよう、先生!」わざと惚けた顔つきをしてみせながら、「よくこの電車でお目にかかるじゃアございませんか――さては、何かいい巣でもこッちの方にできました、な?」
「なアに、巣鴨の巣、さ!」