相馬 泰三
新らしき祖先
一
或る年の、四月半ばの或る晴れた日、地主宇沢家の邸裏の畑地へ二十人ばかりの人足が入りこんで、お喋舌をしたり鼻唄を唄つたりして賑かに立働いてゐた。或る者は鋤を持つて溝を掘り、或る者はそこから掘上げられた土を運んで、地続きになつてゐる凹みの水溜を埋めてゐ、また或る者は鍬の刃を時々キラキラと太陽の光に照返へらせながら去年の畝を犂返してゐた。
漸く雪解がすんだばかりなので、ところどころでちよろ/\小流が出来てゐた。掘返へしても掘返へしても、かなり下の方まで土がぢく/\濡れてゐた。それで、人足たちの手も足も、着てゐる仕事着も、頬かぶりにした手拭まで――身体ぢゆう泥だらけになつてゐた。
方々で、泥の飛ぶ音や水のはねつ返へる音がしてゐた。