三好 十郎
斬られの仙太
1 下妻街道追分土手上
右手遠くに見える筑波山。土手の向う側(舞台奥)は小貝川の[#「小貝川の」は底本では「小見川の」]河原添いの低地になっていて、その左手寄りに仕置場が設けてあるらしく荒組みの青竹矢来の上部の一部がみられる。街道からその方へダラダラ下りの小道の角に、ギョッとする程大きい高札。
高札のすぐ傍の路上にペタリと土下座してしきりに額を砂利にすりつけてお辞儀をしている若い百姓真壁の仙太郎。その前の地面にはタトウ紙の上に白い奉書紙と筆硯がのせてある。側に同様土下座をして一緒に辞儀をしたりハラハラしつつ仙太郎の様子を見ている百姓段六。
高札、と二人を遠巻きにして黙って円陣を作って立っている五六人の百姓。他の通りがかりの行商人、馬方、鳥追の女など。中の二、三人の百姓は仙太郎の方を見ておれないで、うなだれ切っている。オドオドと仕置場の方を振り向いて見下す者、何か言おうとして言えず手足をブルブルふるわせている者。百姓の一人は仙太郎に向ってしゃがんでしまい、あやまるように辞儀をしている。行商人がよく読めぬ高札を読もうとして口の中で唸っている。