折口 信夫
歌の話
歌の話について
この度、高濱虚子さん・柳田國男先生[#ルビの「やなぎだくにをせんせい」はママ]と御一しょに、この一部の書物を作ることになりました。その高濱さんの御領分の俳句と同樣に、短歌といふものは、ほんとうに、日本國民自身が生み出したもので、とりわけ、きはめて古い時代に、出來上つてゐたものであります。さうして、それが偶然、私の先生でもあり、またあなた方のこの文庫におけるおなじみでもある、柳田國男先生[#ルビの「やなぎだくにをせんせい」はママ]がお書きの諺の成り立ちとも、原因が竝行してゐるのは、不思議な御縁だとおもひます。
一、短歌の起り
短歌は、唯今では一般に、うたといつてゐます。けれども大昔には、うたと名づくべきものが多かつたので、そのうち、一番後に出來て、一番完全になつたものが、うたといふ名を專らにしたのであります。