田山 花袋
父の墓
停車場から町の入口まで半里位ある。堤防になつてゐる二間幅の路には、櫨の大きな並木が涼しい蔭をつくつて居て、車夫の饅頭笠が其間を縫つて走つて行く。小石が出て居るので、車がガタガタ鳴つた。
堤防の下には、処々に茅葺屋根が見える。汚ない水たまりがあつて、其処に白く塵埃に塗れた茅や薄が生えて居る。日影のキラキラする夏の午後の空に、起伏した山の皺が明かに印せられた。
堤防の尽きた処から、路はだらだらと下りて、汚ない田舎町に入つて行く。
路の角に車夫が五六人、木蔭を選んで客待をして居た。其傍に小さな宮があつて、其広場で、子供が集つて独楽を廻して居た。