中原 中也

詩に関する話

一、序

近頃芸術は世界全般に亙つて衰へ、その帰趨を知らない。種々なる主義傾向によつて賑はつてゐるとは云へ、各人は衰弱し、独りゐては考へ込み、人と遇つてはカラ笑ひしてゐる。私も亦同様である。然るに今日私は過去五年間の暗中模索、傷ましき躁宴の後に、聊か芸術の泉なるものが依て以て存する所以に想ひ到つた。――どうぞ愚人の囈言も偶にはよいとして、私の語る所を聴いて貰ひたい。

ありとある微分値の間を駆け巡り、今日積分値にまで漸く辿りついてみると、案外に道は近きにあるに驚かざるを得ない。

要するに芸術とは、自然と人情とを、対抗的にではなく、魂の裡に感じ、対抗的にではなく感じられることは感興或ひは、感謝となるもので、而してそれが旺盛なれば遂に表現を作すといふ順序のものである。

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